春の収穫

「うわぁ〜！トドだぁ〜トドが上がったぞぉい！！」
浜辺にうちあげられたそれはそれは立派な体格のトドに漁村の民は一様に喜んだ。
「これで今夜の晩飯はトド汁だねっおっかぁ！」



「まてぃ！」
「うわ！トドがしゃべった！」
「だぁれがトドじゃい！良く見んかい。黙って聞いておればいい気になりおって。ワシは猫じゃ。それも高貴な生まれの アﾝナメリケェン・ショゥテゥヒェア〜の血筋をひくお猫さまじゃぞ。」


「なるほど。して、そのお猫さまがなぜにトドに変わり果てなすったので？」
「ええいだまれだまれだまれ無礼者！話が先に進まんではないか！だからワシはトドなぞではないわと言うとろうが！
話せば長い話になるが、仔細あって故郷をでて幾千里。ようやくここにたどり着いたのじゃ。皆の者、ワシは腹が減っておる。たれぞ食物をもて。贅沢はいわん。『焼きかつお』か『焼きささみ』、百歩譲って市射場のバラエティパック、ﾓﾝﾍﾟﾁ舌平目テリーヌおかかふりかけ添えでもかまわんぞ。」
ﾓﾝﾍﾟﾁ？市射場？舌平目てり？？？貧乏な村人には聞いたこともない御馳走の名前だった。

村人はため息をつきながらトド…もといお猫さまに言った。
「はあぁ、お前さまが苦労してここまで来なすったのはようわかった。しかしな、ここは見たとおり貧しい村じゃ。食い物といえば海藻とｶﾘｶﾘくらいしかだせんぞ。」

お猫さまは最初は不満げだったが、出された「海苔」と「ﾀﾞｲｴｯﾄｶﾘｶﾘ」のおいしさに目を輝かせた。
「う、うまいにゃ♪うまいにゃこりゃ♪」

こうしてトド…もといお猫さまはこの村に住み着き、守り神として一生を送ったそうな。
だがその体型は、トドからクジラに進化したそうじゃが。
でめたしでめたし。